評価

国立ソフィアフィル、フィルハーモニー協会会長  ピーター・ショポフ(博士)による批評

(2006年ブルガリア・ソフィア国際音楽祭にて国立ソフィアフィルハーモニー管弦楽団とラフマニノフピアノ協奏曲第2番を協演)

谷氏は疑いもなくビルトゥオーゾだ。彼女は様々な才能の深い宝庫であり、その才能を余すことなく公開した。スラブ人である私が感動したのは、ソリストと指揮者のスラブ魂に深く突き入る能力だった。ラフマニノフの音楽が世界性と多面的な情感を持つという事実が、二人の音楽家(指揮者の守山氏と谷氏)がこの作曲家の内面に入り込むことを可能にした。

この作品は指揮者へは経験と能力を、ソリストへは優れたテクニック、感情を制御する能力、作品のムードを変化させるダイナミズムへの強い感受性が要求される。谷氏はこれらの要求を満たすのに成功した。それは第一楽章から充分に見てとれた。第二楽章は極度にロマンティックな性格を持っているが、ピアニストはその音楽と完全に融け合った。指揮者とソリストは彼らが帰属する日本を卓越して、世界市民であることを証明した。


第三楽章では谷氏は再び見事なテクニックを披露した。彼女は音の網を編んでいるようだった。網は指揮者を通してオーケストラにかかり、そして観客席を包んで行った。谷氏はブルガリアの表現で言えば「黄金の両手」を持っている。彼女が嵐のような拍手で賞賛され、何度もステージに呼び出されたことには何の不思議もない。